こんにちは。
KEI.です。
トレーニングに限らず、人が運動(体を動かす)する時、エネルギーが必要です。
そしてそのエネルギーは体内に無限にあるわけではありません。
エネルギーが体の中で使われ、補充される仕組みが分かればトレーニングにも、ダイエットにも生かせます。
今回は、そんな人のエネルギー代謝についてできるだけ簡単にまとめてみました。
体を動かすエネルギーの素はATP
運動とは、突き詰めると
「筋肉が骨を動かすこと」
です。
今あなたが、スマホの画面をスライドしている、もしくはマウスで下スクロールしている指の運動も、筋肉が指の骨を動かすことで起きています。
もちろん「走る」という運動も、筋肉が連動しながら全身の骨を動かすことで成立しています。
つまり運動するためには筋肉が働かなくてはなりません。
その際に筋肉を動かすエネルギーが必要ですが、そのエネルギーの元がATP(アデノシン三リン酸)と言われる物質です。
人はこのATPを体の中で分解することでエネルギーを作り出し、筋肉を働かせ、運動を行うのです。
ATPを補充
当然ですが、エネルギーを作り出すためにATPを分解してしまったら、ATPはなくなってしまいます。
もちろんATPは体内に無限に存在する物質ではないので、無くなる前に新たに補給しなければなりません。
もしなくなったら人は動けなくなってしまいます。
では、どうやってATPを補充するのか?
そのために人は、エネルギー代謝を備え持っています。
ここまでのまとめ
- 運動とは、「筋肉が骨を動かすこと」。
- 筋肉を動かすエネルギーの素はATP。
- ATPを分解してエネルギーを作る。
- 無くなったATPを補充するためにエネルギー代謝機構を活用する。
3つのエネルギー代謝機構
エネルギー代謝機構は、簡単に言えばATPを生産するための人体の働きです。
大きく分けて3種類の方法があり、それらを運動の様式によって使い分けています。
なぜそんな必要があるかといえば、運動によって、必要とするエネルギー生産のスピードが違うからです。
例えば100m走であれば10数秒、トップレベルでは10秒以内という短い時間で多くのエネルギーが必要とされます。
フルマラソンでは2〜3時間という長い時間エネルギーを生産し続けなければなりません。
ということは、前者はできるだけ速く多くのエネルギーを作り出す必要があり、後者は素早く多くのエネルギーを作り出す必要はないが、長い時間持続してエネルギーを作り出す必要があります。
このように必要とされる時に必要なエネルギーを供給するため、複数の代謝があるのです。
ATP-CP系
これは最も速くATPを補充できるエネルギー代謝です。
逆に長い時間にわたってエネルギーを供給するのは苦手です。
ADPとPCr
記事の最初に、
「ATPを分解してエネルギーを作り出す」
と書きましたが、ATPが分解されるとエネルギーと同時にADP(アデノシン二リン酸)という物質も生成されます。
ATP-CP系ではこのADPと体内にあるクレアチンリン酸(PCr)という物質を使ってATPを作り出します。
化学式を持ち出すと難しくなるので、簡略図で表します。↓
このエネルギー代謝が主として使われるのは、素早くエネルギーを生産しなければならない運動をしている時です。
具体的には、100m走などの短距離走、サッカーやバスケなどの球技におけるスプリントなどです。
他にも例えば、ジャンプや、高強度のウェイトトレーニングなどを行っている時にもATP-CP系がメインとなってATPを生産します。
なぜこのような運動時に素早くATPを生産しなければならないかというと、
スプリントなどの超高強度の運動に必要となるエネルギーは、筋肉中に元からあるATPではまかないきれず、数秒でATPが枯渇してしまうからです。
高強度運動では瞬時に多くのエネルギーを必要とします。
そのために多くのATPを素早く分解していきます。
しかし、筋肉中に元からあるATPは数秒で枯渇してしまいます。
もしも補充すべきATPをゆっくり生産していたら、途中で体内のATPが枯渇し、筋肉を動かせなくなってしまいます。
そうならないのは、運動中にATP-CP系で素早くATPを補充しているからなのです。
PCrの回復
上の図をみて、
「あれ、これを続けたらPCrがなくなってエネルギーがつけれなくなるぞ。」
と思う人もいるかもしれません。
PCr(クレアチンリン酸)は、運動後3分〜5分ほどでほぼ回復します。
この回復には、のちに説明する酸化系エネルギー代謝で作り出されたATPと、クレアチンという物質を利用しています。
ATP-CP系まとめ
- 最も素早くATPを生産ができる。
- ADP(アデノシン二リン酸)とPCr(クレアチンリン酸)を利用してATPを作る。
- PCrは時間とともに回復する。
解糖系
解糖系は、ATP-CP系の次に速くATPを生産する代謝機構です。
最大努力で行ったときに、10秒から70秒ほどしか持続できない強度の運動をしているときに最も使われます。
例えば200m、400m、800m、1500m走などの陸上種目です。
サッカーなどの球技では、全力疾走とまではいかないが8割9割くらいの速度で走っているとき、などで主に使われています。
解糖系では、筋肉中のグリコーゲン(糖質)を利用してATPを生産します。
また、このエネルギー代謝の特徴の一つに、グリコーゲンが分解され最終的に乳酸が作り出される、ということあります。
乳酸は疲労物質だととらわれがちですが、実際には、乳酸はATP生産のエネルギー源として使われます。(有酸素系の項で解説↓↓)
つまり乳酸は疲労物質ではありません。
(そのうち記事を書きます。)
解糖系まとめ
- ATP-CP系の次に速いエネルギー代謝。
- グリコーゲンを分解する過程でATPを生産する。
- 分解過程で乳酸ができる。
- 乳酸はエネルギー源であり疲労物質ではない。
酸化系
これは最もATP生産のスピードが遅いエネルギー代謝機構です。
最大努力で行ったときに70秒以上持続できるくらいの低強度の運動時に主として使われます。
歩行や、ジョギング時が代表的です。
スポーツでいうとマラソンや5000m走等の長距離走、またサッカーで言えば、プレー間のジョギングや休息時がこれにあたります。
有酸素系という名の通り、酸素を利用してATPを生産します。
日常生活や長距離走の場合は運動を持続するために使われ、球技やインターバルトレーニングでは直前の高強度の運動から身体を回復させるために利用されます。↓
これは過去記事に書いてます。
(リンク先の「酸素の使われ方が違う」の項に記述)
サッカーのピリオダイゼーションを実践する現場で活動して感じること。-レイモンド・フェルハイエン氏のコンディショニング理論- - KEI’s Sports & Training
このエネルギー代謝はATP生産のスピードは遅いですが、長い時間生成し続けることは得意なので、強度の低い運動、または長時間の運動時に利用されるのです。
また、酸素と同時に脂質を利用するため、体内の脂肪を消費することができます。
そのため、ダイエットではウォーキングやジョギングが行われているのです。
運動=ランニングっていう考え、ほんとにそれでいいのと思う3つの理由 - KEI’s Sports & Training
乳酸をエネルギー源に
酸素を使って乳酸をエネルギー源として利用します。
詳しくは別記事で書きたいと思います。
簡単にいうと、
乳酸は疲労物質ではなくエネルギー源である
です。
酸化系まとめ
- 最も遅いが、長い時間ATP生産ができるエネルギー代謝。
- 酸素と脂肪を利用する。
- 場合によって、運動の持続と、直前に消費したATPの回復の役割が変わる。
- 乳酸を利用する。
3つのエネルギー代謝は同時に起こる
強度が高い時はATP-CP系、
低い時は酸化系と言いましたが、実際には全てのエネルギー代謝は同時に起こっています。
100m走でも酸化系は利用され、長距離走でもATP-CP系や解糖系は利用されます。
100m走では多くのエネルギーをATP-CP系で作り出しますが、それが全てではなく、解糖系・酸化系からも一部エネルギーを生成しています。
ただ、その割合が強度によって変わる、という話です。
有酸素運動と無酸素運動?
俗にいう有酸素運動と無酸素運動は、上記の3つのエネルギー代謝機構の違いによって分けられています。
ATP-CP系、解糖系はATP生産に酸素を必要としないので、これらをメインに使う運動は無酸素運動と呼ばれます。
有酸素系は酸素を必要とするので、これをメインとする運動は有酸素運動と言われています。
しかし、実際には、100m走でも有酸素系エネルギー代謝は利用され、フルマラソンでも解糖系エネルギー代謝は利用されるので、厳密には、これらの言葉は適当な言葉とは言えないです。
まとめ
今回はエネルギー代謝についてまとめました。
できるだけわかりやすいよう簡単に書いたつもりですが、どうだったでしょうか?
簡単にいうと
高強度の運動ではATP-CP系、
中強度の運動では解糖系、
底強度の運動では酸化系が主に利用されているということです。
これがわかっていれば、
- なぜコンディショニングトレーニングに様々な方法があるのか?
- なぜインターバルトレーニングをするのか?
- なぜ長距離走をやってもサッカーで90分体力が持たないのか?
- どのようなトレーニングを行えばいいのか?
などいろいろなトレーニングに結びつけて考えることができます。
また、スポーツ以外でも、例えば、
なぜダイエット目的で有酸素運動が進められているのか?
などがわかります。
もっと詳しく学びたい人はぜひ勉強してみてください。
結論
トレーニングの基本!