こんにちは!
KEIです!
今回は前回に引き続きアジリティに関する話題です。
前回記事↓
アジリティシリーズ↓
1.アジリティの要素
前回記事でアジリティとは
Agility is ‘‘a rapid whole body movement with change of velocity or direction in response to a stimulus’’. (Sheppard JM, Young WB. 2005)
アジリティは、刺激に反応する中で行われる、速度変換や方向転換を伴った素早い全身運動である。
または
他者(味方・相手に関わらず)の動きに反応・対応しながら、スピードや移動方向を素早く変える能力
と言いました。
それをさらに詳しく説明してみます。
アジリティの要素は以下の図のように定義づけられます↓(W B Young, R James, I Montgomery. 2002)
図が英語で分かりにくい場合は和訳したものが以下のリンクから見れますのでそちらを見てください↓
アジリティについての考察: 現場のストレングス&コンディショニングへの応用
上の図もしくはリンク先から、アジリティは大きく分けて2つの要素によって成立しているといえます。
- 知覚および意思決定能力(Perceptual and disision maiking factors)
- 方向転換のスピード(Change of direction speed : CODS)
の2つです。
〇知覚および意思決定能力
知覚および意思決定能力(Perceptual and disision maiking factors)とは、目の前で発生した刺激に対して、それを認知し、次の行動を自らの中で決定し実行に至るまでの能力です。
簡単に言えば、球技で、
「相手が右に行こうとしているからそっちの方向へ移動しよう」
「右に行こうとしたけど相手が同じ方向に行こうとしてるから左に変えよう」
などといった状態のことです。
この認知・意思決定能力はさらに4つの要素によって成り立っています。
- 視覚による読み取り
- 予想(予測)
- パターンの認識
- 状況の把握(状況に対する知識)
の4つです。
①視覚による読み取り
視覚情報として刺激を受け取りその情報を読み取る能力のこと。
これはシンプルに映像として読み取ることであり、例えば
「相手選手がドリブルをしている」
「右に移動している」
現在進行形の情報を受信することです。
②予想(予測)
これは言葉の通り、次の状況を予想することです。
「相手が右に移動しようとしている」
「左にパスを出そうとしている」
などです。
経験や知識をもとにした能力で具体的には以下の2つの要素をもとに行われています。
③パターンの認識
どんな動作や状況にもパターンが存在します。
「右に方向転換しようとする人は左足を体の左側につく」
「バスケでシュートを打つときは利き手と逆の手をボールの横に添えて一瞬かがむ」
などといったものです。
これはその動作を視覚情報として見ても、それがどんな動作なのか理解できる人とできない人がいます。
テニスや卓球などで熟練者ほど相手が打ち返す直前には返球の方向・球種がわかる、といったものはその典型例です。
そのパターンが素早く正確に認識できれば意思決定までの時間も短くなります。
④状況の把握(状況に対する知識)
「この選手はドリブルが得意で正対したら必ず抜きに来る」
「試合終盤で相手は負けているからリスクを負ってでも攻撃に出てくるだろう」
このような情報・状況を把握できているか、経験として知っているかはより速い予測や意思決定につながります。
これはその競技に特異的なもので、パターンの認識とともに、一般的にその競技の熟練者ほどすぐれた能力を持っています。
以上の4要素をもとに刺激を取り入れ、次の行動を決定する能力が知覚および意思決定能力です。
〇方向転換のスピード
方向転換のスピード(Change of direction speed : CODS)は従来のアジリティテスト(前回記事参照)やコーンドリルなどのジグザグ走で焦点を当てられている能力です。
アジリティというと思い浮かべるのはこれでしょう。
これも3つの要素に分けられます。
- テクニック
- 直線スプリントのスピード
- 脚筋力の特性
テクニック
テクニックは3つの要素で成り立ちます。
- 足の位置
- 加速と減速のためのストライド調整
- 身体の傾きと姿勢
これらは方向転換のために
・どこに足をつくか
・移動方向や速度に応じてどうストライドを調節するか
・動きたい方向に体を傾けられるか、また正しい姿勢がとれるか
といった技術的要因のことです。
これはトレーニングによって向上させることが可能です。
一般的なアジリティトレーニングによってトレーニングしていると思われるのはこの能力といえるでしょう。
直線スプリントのスピード
これはシンプルにまっすぐ走る速さのことです。
30m走、40ヤード走、100m走などいろいろありますがそれらのタイムのことです。
しかし、直線スプリントとCOD走はそれぞれ特異的な能力です。
思い返せばいると思います。まっすぐは速いけど止まれない、曲がれない人。
直線走スプリントのトレーニングをしてもCODSは向上しないという研究結果もあります。(参考論文参照・ページ下)
CODの要素の一つではありますが、トレーニングの際にはどちらを向上させたいのか、はっきりさせる必要があります。
脚筋力の特性
脚筋力の特性は3つあります。
- 筋力
- パワー
- 反応筋力(Reactive strength)
今回は筋力とパワーの違いには触れません。
ちょっとググれば出てくると思うので調べてみてください笑
反応筋力(Reactive strength)は、いわゆるSSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル)を利用した筋力発揮のことです。SSCに関しては今度記事書きます。
簡単に言ったら筋肉が瞬間的縮まって素早く伸ばされると大きな力を発揮しますよってことです。(例えば、ゆっくりしゃがんでからジャンプした時と、素早くしゃがんで素早くジャンプした時だと後者の方が高く跳べる)
横方向に方向を変えるときのカッティング動作などでは単純な筋力(スクワットやレッグカールなどで数値化されるような)だけではなくこの反応筋力が重要となります。
大切なのは脚筋力だけを見るのではなく、コアの安定など様々な要素を含めた全身運動としての脚筋力の特性を考えることです。
以上の3つの要素をともなって行われるのが方向転換(COD)が行われます。
2.方向転換のスピードを高めればアジリティが向上するのか?
ここからがメインです。
ここまででアジリティとは
知覚および意思決定能力と方向転換のスピードの2つの要素で成立しているということを書いてきました。
となるとこう考える人が出てくるでしょう。
「方向転換のスピードを上げればアジリティも上がるじゃん!」
。。。
そうはいかないんです。
アジリティにおける研究で
・競技能力の高いラグビーリーグの選手は対戦相手の競技特異的なカッティング動作に反応するアジリティテストで、競技能力の低い選手よりも有意にすぐれた結果を出した。
・一方、知覚・意思決定を伴わないCODスピードのテストでは差がなかった。
・実際に優れた選手ほど意思決定と反応の速度が速い。
といったものがあります。
ここから考えられるのは、
優れた選手ほど知覚および意思決定能力が高いためにアジリティが高い
という可能性と、
CODとアジリティはそれぞれ特異的な(別の)能力である
という可能性です。
だってCODは差がなくてもアジリティには差があるんだから。
そうであるならば、トレーニングすべきは状況判断を伴った方向転換です。
テストの数値ではなくパフォーマンスを向上させたいならば、です。
さて、それではラダーやジグザグ走でアジリティは向上するでしょうか?
3.まとめ
今回はアジリティの要素と、従来のトレーニングへの疑問をかきました。
ただ今回も前回も書いたのは、アジリティに対する考え方だけなので、実際にどうしたらいいのか、というところは書いていません。
今後はそこも書いていきたいと思います。
結論
アジリティって難しい!
参考文献