KEI.'s blog

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第1弾・アジリティとは単に素早く動く能力ではない?

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こんにちは。

KEIです!  

今回はアジリティをテーマに書いていこうと思います。

というのも、自分の卒業研究のテーマがアジリティに関するものだからです。

もともとアジリティって素早く動く能力のことだと思っていたのですが、学んでいくうちにとても複雑な能力であるということを知りました。

今回は、僕が学んできたことの一部を紹介していこうと思います。

 

アジリティシリーズとしていくつか記事を書いているのでぜひそちらも読んでみてください。

www.matsu-taiiku.com

 

 

 

1.アジリティとは?

多くの方がアジリティと聞いたときには

・素早く動く能力

・細かい動きを正確に行う能力

・素早く曲がる能力

といった答えが返ってくるのではないかと思います。

 

または、有名なテストである、T-testやPro-agility testで測定されるような、素早く方向を変える能力だと答える人もいるでしょう。

しかし、これだけではアジリティを説明することはできません。

海外のアジリティに関する研究で有名なYoung氏という方がいます。

彼の発表した論文で、アジリティは以下のように説明されています。

 

Agility is ‘‘a rapid whole body movement with change of velocity or direction in response to a stimulus’’. (Sheppard JM, Young WB. 2005)

アジリティは、刺激に反応する中で行われる、速度変換や方向転換を伴った素早い全身運動である。

 

ん?

だからアジリティは素早く動く能力何でしょ?

と思う方もいるかもしれませんが、

in response to a stimulus (刺激に反応する中で行われる)

の部分が非常に重要になってきます。

 

2.刺激への反応

スポーツの中でアジリティが求められるのはどんなシチュエーションでしょうか?

どのような競技であれ、アジリティが必要とされるシチュエーションには必ず対応すべき相手がいます。

サッカーやバスケのような球技であればであれば、相手選手のドリブルに対応するときや、ドリブルで相手を抜き去る時、オフザボール(攻撃側でボールを持っていない状況)の動きで相手のマークを外す時など。

剣道やボクシングなどの武道や格闘技も、細かく方向やスピードを変えて動きますが、ここでも相手いて初めて自分の動きが決定します。

しかし、陸上競技や水泳などではアジリティは必要とされません。

それは対応・反応すべき他者が目の前に(物理的な意味で)がいないからです。

 

つまり、スポーツにおいてアジリティとは、相手がいてはじめて成立する能力であり、

他者(味方・相手に関わらず)の動きに反応・対応しながら、スピードや移動方向を素早く変える能力

と言えます。 

 

3.アジリティテストの記録が良ければアジリティ能力が高い?

 一般的にアジリティを数値化しようとするときに用いられるテストは

T-test

Pro-agility test

5-0-5 test

のようなものでしょう。

これらは一定の距離を方向と速度を変化させながら移動する速さをタイムとして数値化するテストです。

しかし、どうでしょうか?

これらのテストには反応すべき他者、もしくはその他の刺激はありません。

あらかじめ決められたルートを、あらかじめイメージした通りの動きで移動しているに過ぎません。

これではin response to a stimulus (刺激に反応する中で行われる)アジリティ能力を測定しているとは言えないでしょう。

 

これらのテストで測定できるのは方向転換(Change of Direction:COD)の能力です。

 

4.COD

CODは刺激の伴わない、単純な方向転換であり、一般的にアジリティと言われている能力です。

例えば野球のベースランニングや、上記のようなテスト、球技の中でも他者の動きに関係なく自分の意思だけで方向転換する場合*などで必要となる能力です。

(*厳密には球技はどんな状況でも味方・相手がいて自分の動きが決定されるためCODはほぼないと言える。)

 

これは、他者からの刺激のない状況下で行われます。

よってそこには情報を認知し自分の行動を決定する、認知・意思決定能力は必要としません。

 

パフォーマンスアップのためにアジリティを向上させようと、ジグザグ走やラダートレーニングを行っている選手は多いかと思います。

しかし、そこには認知・意思決定能力が伴わないため、向上するのは方向転換能力です。

アジリティ向上には不十分と言えるかもしれません。

 

 

5.まとめ

今回はアジリティに 対する考え方を紹介しました。

なぜこのような話をしたかというと、アジリティが単なる素早い方向転換能力でないと認識することでトレーニングの手段が変化するはずだからです。

 

数字上は能力が低いはずなのに、競技中はキレのある素早い動きを見せる選手、また逆もしかりですが、思い当たりませんか?

方向転換能力が高い人がアジリティも高いとは限りません。

次回は、その辺りも含めより詳しくアジリティについて書いていこうと思います。

ありがとうございました!

 

参考文献

Sheppard JM, Young WB. (2005). Agility literature review: classifications, training and testing. J Sports Sci. 2006 Sep;24(9):919-32.

 

 

 

20代大学生! 将来スポーツ界で生きていくこと、 運動で日本中の人達を豊かにすること目標に勉強中。。。